「2方向避難の確保」ができないとのことなのですが何でしょうか?
「2方向避難の確保」とは、避難に遅れるかもしれない方々が入居する施設に対する独自のルールです。
でも全てのグループホームにその条件が求められることもないので、「2方向避難の確保」基準が要求されるポイントをご説明いたします。
- 「2方向避難の確保」基準が要求されるポイントがわかる
- 「2方向避難の確保」をしなくてもいい条件がわかる
- 「2方向避難の確保」と消防設備の関係がわかる
2方向避難の確保とは
「2方向避難の確保」が問題となるのは主に、小規模な戸建住宅をグループホーム(=寄宿舎)に転用する場合に対する建築基準法の規制です。
<2方向避難の確保とは?>
火災などの災害発生時に、一つの避難路が塞がれても、もう一方の避難路を選択できるようにすることです。階段、バルコニーなどを利用することが考えられます。
グループホームでは主に階段や屋外への経路を利用して「2方向避難の確保」の基準を満たそうとしています。ただ全ての物件に「2方向避難の確保」の条件が適用するわけではないので、その気になる必要条件からお話しいたしましょう。
直上階の寝室の床面積の合計が 100m²を超える場合
「2方向避難の確保」の条件が求められるのは直上階の寝室の床面積の合計が 100 m²を超える場合だけです。
直上階のそれも寝室の面積の合計が100㎡というのは、グループホームの居室が約14室備わっている程度の規模です。
つまり「2方向避難の確保」が適用される事例は限定的なのです。住宅を転用してグループホームを開業する場合は上階が14部屋もある規模が大きめの物件のみに適用されます。
階段部分を「間仕切り壁」or「煙を遮る構造を備えた戸」で区画すれば適用除外
注意点は「2方向避難の確保」の基準が必要となる規模の物件でも、階段部分を適切に区画すれば2方向の避難を確保しなくてもいいという点です。
<階段部分を適切に区画する方法>
・間仕切り壁
・煙を遮る構造を備えた戸
「2方向避難の確保」は災害の状況を想定して要求されているので、避難経路となる階段を他の災害が想定される部分から区切っているのであれば、別の避難経路まで用意することはないということです。
2方向避難の確保と防火対策について
「2方向避難の確保」が厳密に要求されるケースは一定規模の物件だけでしたが、義務でなくても防火対策でも避難経路を2つ確保することは自治体から評価される要因になりますし、利用者の安全確保に役立ちます。
その通りです。「2方向避難の確保」はスプリンクラーの設置の条件と関わってきます。両者の関係についてご理解いただければ「2方向避難の確保」のポイントがわかると思います。
「2方向避難の確保」とスプリンクラー設置
グループホームを始めとして障がい福祉事業の物件は条件付きでスプリンクラーの設置が求められます。
・【徹底調査】障がい福祉事業に「スプリンクラー」の設置は必要?費用は?
注意点はスプリンクラーの設置が求められなくても利用者保護のために物件内の内装に関して厳しい規制があります。
そこでポイントは「2方向避難の確保」を始めとして、いくつかの要件を満たしているとこの「内装の制限」を満たしたと見做され、内装に関する規制が適用されない点です。
<内装制限が撤廃されるための全条件>
・「2方向避難の確保」
・防火建物
・単一用途
・入居者が利用する階が避難階
・居室を区画
・煙感知器を設置
・居室に屋内外から出入りできる開口部がある
このような幾つもの安全確保に役立つ基準を満たしていればスプリンクラーばかりでなく内装の制限もありません。「2方向避難の確保」をしていれば防火対策の観点で物件が評価されやすいです。
「2方向避難の確保」と開口部
防火対策との関係で「2方向避難の確保」を、特に屋外の経路で確保する際は開口部との関係にご注意ください。
屋外の経路で開口部を利用するためには次の要件が必要になります。
<屋外の経路で開口部を利用するための条件>
・屋内外から容易に開放
・幅員1メートル以上の空地に面する
・避難できる大きさ
まさに別の避難経路を確保するために開口部を利用するには適切な条件を満たさないといけません。よくあるトラブルで1メートルの空き地に接していないケースをよく見かけますのでご注意ください。
まとめ
必要となる物件の条件や具体的なイメージがついて助かりました!
「2方向避難の確保」が必要となる物件は一定規模以上ですが、それ以外の物件でも安全上の配慮をする方が安全です。
またスプリンクラーを設置しない場合の消防設備の要件でも、「2方向避難の確保」があれば消防設備に多大な費用をかけずに済む場合もあるのでご注意ください。