障がい福祉事業を始める物件に、消防設備としてスプリンクラーを設置する必要はあるでしょうか?
プリンクラーとは、火災発生時に天井に設置されたヘッド部分から自動的に水を撒き、火災を初期消火するための装置です。
「いくら障がい福祉をする物件とはいえどスプリンクラーまで…」と考えられる方もいるかもしれませんが、条件に合致すればスプリンクラーの設置も求められます。
この記事を読めば、どのような障がい福祉事業所がスプリンクラーを備えないといけないのかが分かると同時に、スプリンクラーの注意点や費用も知ることができます
これまで設立や運営でお付き合いしてきた障がい福祉事業所さまの中には、必要な消防設備のことまで考慮せず物件を選んできて、スプリンクラーの設置を求められ想定外の出費に悩んでおられた方々も拝見してきました。
そこで出来るだけ早期の段階で、高額な費用がかかるスプリンクラーの設置が必要かどうかがわかっておけば、想定外の出費を抑え、必要十分な予算を確保して、安定した事業所経営を始めることができます。
スプリンクラーの設置は必要?
開業予定の障がい福祉事業にスプリンクラーが必要かどうかは「消防法令の6条」を見れば分かります。
消防法令の6条は障がい福祉サービス全体を2つに分けているので、どちらに当てはまるか確認した上で、必要かどうかを調べてください。
6条ロのグループ:全て設置
子どもの障害福祉:障害児入所施設
大人の障がい福祉:障害者支援施設 / 短期入所を行う施設 / 共同生活援助を行う施設(障害区分4以上が約8割超)
この消防法令6条のロのグループに当てはまる障がいサービスの不動産の全てにスプリンクラーの設置が必要になります。
従って6条のロのグループに当てはまる障がいサービスは、開業準備の直後から「スプリンクラー」の設置の準備をしておく必要があります。
「スプリンクラー」は設置するまでに専門家による調査などを経る必要があって時間がかかります。
また場合によっては複数台の「スプリンクラー」を配置しないといけないので、その結果多額の費用になり、融資の申請などで影響が出てしまいます。
そして「スプリンクラー」には種類がありますが、一般的に障がい福祉施設に設置するには「閉鎖型湿式スプリンクラー」を使われるところが多いです。
6条ハのグループ:6000㎡以上は設置
子どもの障害福祉:児童発達支援センター / 児童発達支援施設 / 放課後等デイサービス施設
大人の障がい福祉:身体障害者福祉センター / 地域活動支援センター / 就労移行支援施設 / 就労継続支援施設
/共同生活援助を行う施設(障害区分4以上が約8割以下)
この消防法令6条のハのグループに当てはまる障がいサービスの物件は、面積が6000㎡以上なら火災通報装置の設定が義務付けられています。
6000㎡という規模はかなり大規模です。
6条のハのグループに当てはまる障がいサービスは「スプリンクラー」を設置することは殆どないとお考えください。
スプリンクラーの費用とは?
これまで消防法の規定に沿って、どのような障がい福祉サービスの物件に消防設備「スプリンクラー」が必要かどうかを説明してきました。
著名なところで言うと、共同生活援助を行う施設(障害区分4以上が約8割超)、つまりグループホームには「スプリンクラー」の設置が義務付けられています。
※共同生活援助を行う施設(障害区分4以上が約8割超)の例外
275㎡未満で、種別1「障がい区分4以上で支援項目で支援項目の殆どで全面的な支援が必要でない者」と種別2「障がい区分3以下の者」の数が合計の2割以上であれば、スプリンクラーを設置する必要はない。
ただしこの例外の場合でもスプリンクラーの設置を求める自治体はあるのでご注意ください。
そこで続いて気になるのは、
「スプリンクラー」を設置するのにいくら費用がかかるの?
と言う点ではないでしょうか。
そこで「スプリンクラー」の設置の費用をご説明するとともに、設置までの手続きや注意点などをご説明いたします。
1台の費用:約10万円
火災を感知すると自動的に作動する有能な「スプリンクラー」を設置するには、いくらお金がかかるか心配ですよね。
そこで例として消防テック様の設置工事の費用をご紹介いたします。
(名前) | (費用) |
消防テック | 98,000〜円 |
つまり「スプリンクラー」の設置費用は約10万円ぐらいかかると想定しておくと無理はなさそうです。
けれども他の消防設備と比較しても「スプリンクラー」が高価であることがわかると思います。
総額:10万円✖️?
けれども注意していただきたいのは、「スプリンクラー」を一台だけ設置すれば十分な場合が少ないことです。
厳密に言えば、開業予定物件を消防の専門家や消防署に提示して検査を受けて、どの箇所にどれくらいのスプリンクラーが必要かを知らなければなりません。
全国消防点検.comに記されている事例は次のとおりです。
(事例) | (費用) |
水道直結式スプリンクラー | 約210万円 |
敷地にタンクを設置するポンプ設置式スプリンクラー | 約410万円 |
ただし「スプリンクラー」の設置に関しては所在地の市町村等で補助金が交付されるので、ぜひお近くの役所にお問い合わせして活用してください。
これらの消防の専門家の調査には時間がかかりますので、上記の消防法の基準を確認し「スプリンクラー」が必要かどうか分かれば時間勝負になり、すぐに消防署に連絡してください。
注意:修理費用もかかる?
「スプリンクラー」を設置して長時間経つと、そのヘッド部分が故障する場合があります。
それには修理費用が必要で、それには配管の水を抜くなど作業工程が多く、費用と時間がかかります。
個別の事例によりますが目安としては、1台の交換で約13万円程度かかるとお考えください。
また他にも、配管の水漏れや消防設備自体の故障などのトラブルも想定できるので、それにも修理費用がかかることを覚えておいてください。
スプリンクラーの設置に伴う事務作業とは?
開業予定の障がい福祉サービスの種類が「スプリンクラー」を必要とするか確認したのち、設置費用もわかったので、これで一安心するかもしれません。
けれども実は「スプリンクラー」を設置するにあたっては、必要な事務作業がまだ待っています。
そのような「スプリンクラー」の設置に伴う事務作業とは何でしょうか?
最後に皆様が忘れがちな点をご説明いたいします。
スプリンクラー設備着工届
「スプリンクラー」を設置するため消防の専門家にチェックしてもらい、いざ「スプリンクラー」の設置の工事をお願いする時に管轄の消防署に届出をしないといけません。
それが「スプリンクラー」設置工事のための着工届です。
添付する書類は、「着工に関する概要表」に加え、スプリンクラーの設置には欠かせない「配管系統図」や「図面」なども必要になってきます。
場合によっては「スプリンクラー」の設置をお願いする消防設備会社が代行してくれることもありますが、基本的に有料の場合が多いです。
スプリンクラー設備設置届
専門業者による「スプリンクラー」の設備設置が終われば、その旨も地域の管轄の消防署に提出しなければなりません。
ここでもまた、「概要表」や「配管系統図」、それに「図面」など実際の設置状況を表した書類を添付する必要があります。
そしてこれで終わりではなく、そこからこのような届出資料に基づいて管轄の消防署の点検が入ります。
このようなプロセスを経て、障がい福祉施設における「スプリンクラー」の設置は完了いたします。
まとめ
・6条ハのグループ:6000㎡以上は設置
・総額は約10万円×?
・着工届や設置届を出さないといけない
合わせて読みたい消防設備について
・【障がい福祉不動産】:自動火災報知器の設置の有無、種類、費用
・【障がい福祉不動産】:消化器の設置の有無、種類、費用