障害福祉事業を開業する物件で耐震化工事は必要でしょうか?
国の給付を受ける障がい福祉事業は利用者保護の意味もあり、「開業する物件が各種法令に適合しているか」厳しくチェックされます。
その1つの基準が、
開業予定物件が地震に耐えられる構造になっているかどうか
です。
この記事を読むと、障がい福祉事業の物件に耐震化工事が必要かどうか、さらにその費用相場や助成金制度の活用法が分かります
これまでいくつもの障がい福祉事業所の設立に携わってきましたが、法令等への適合条件を考慮せずに物件を先に選んでこられた方もいらっしゃいました。
もし既に物件を契約してしまっていて耐震工事の必要が出てくると、多額の費用と時間がかかってしまいます。
そうならないように、この記事で耐震化工事が必要かどうか見極める基準をお伝えしたいと思います。
障がい福祉事業は耐震化工事が必要?
障がい福祉事業は、その開業する物件が安全であるかどうか、法令の基準を満たしているかどうかチェックされます。
その1つのポイントが「地震に耐えられるか」どうかです。
このようなポイントを踏まえると、
では、どのような観点をチェックすれば耐震化工事をすべきかどうか分かるの?
という疑問が出てくると思います。
そこでそのような疑問を判断できる基準をご紹介いたします。
1981年以前に建てられた物件
1つ目の目安は「1981年以前に建てられたかどうか」です。
1981年に建築法が改正され、耐震化要件も一層厳密になりました。
・旧耐震基準では、震度5程度の中規模地震で建物が倒壊、損傷しないことが規定されていました
・新耐震基準は、想定震度を大幅に引き上げ、震度6から7の大規模地震が発生しても倒壊せず、建物内の安全を確保できること
従って1981年以前に建てられている物件の場合、現在の耐震化基準を満たしていない可能性が高いのです。
そこで登記簿等を確認し、物件が1981年以前に建てられたかどうかをチェックいたしましょう。
吹き抜けがある物件
2つ目の目安は「吹き抜けがあるかどうか」です。
物件の中に吹き抜けがあれば、一般的に柱や壁の量が少なくなっているので耐震性が低くなります。
また吹き抜け部分があるため床面積が不足しやすく、水平方向への揺れに弱いという構造的問題もあります。
できれば物件を内見するときにチェックしたいポイントです。
1階の壁面積が少ない物件
3つ目の目安は「1階の壁面積が少ないかどうか」です。
・車庫や倉庫がある
・大きな窓がある
というような場合は、建物を支える1階部分の壁面積は少なくなります。
それゆえ建物のバランスが崩れやすく、地震の揺れに弱い構造になってしまいます。
こちらも物件を案内して説明してもらう時に聞いてみてチェックしましょう。
【不安な方】耐震診断をしましょう
これまで3つの観点から耐震化が必要かどうか判断する目安をお伝えいたしました。
それでも、「やはり不安がある方」や「補強場所がわからない方」は耐震診断をしてみましょう。
耐震診断とは、専門家が屋内・屋外・床下・天井裏など住宅の耐震性を目視して、非破壊方法で調査します。
だいたいの費用は木造住宅なら20から40万円程度です。
また
- 補助金制度を設けている自治体
- 耐震診断を無料化している自治体
などありますので、お住まいの地域の役所にお問い合わせください。
耐震化工事の費用の相場は?
これまで障がい福祉事業を開業する物件に耐震化工事が必要かどうか見極めるポイントをお伝えいたしました。
そこで次に気になるのは、
もし耐震化工事をするなら費用はどれくらいかかるの?
と言った点ではないでしょうか。
そこで相場ですが、耐震化にかかる費用のだいたいの額をお伝えいたします。
全体は150万円前後
建物全体の耐震補強工事にかかる費用の相場は150万円程度になります。
ただ注意すべきポイントは、
築年数が10年増加するたびに費用が約30万円ずつ増加する
点です。
というのも、築年数が経過するほど建物の劣化が進み、現行の耐震化基準に合わせるのに多くの工事が必要だからです。
部分的な耐震補強工事の相場
耐震補強工事は建物全体でなく部分的な工事も可能です。
以下に部分的な工事とその費用の相場をまとめてみました。
(種類) | (費用相場) |
耐震金物の取り付け | 約40万円 |
壁に筋交いを設置 | 約25万円 |
耐震パネル取り付け | 約40万円 |
屋根の補強と屋根材の取り替え | 約100万円 |
耐震補強工事に助成金はあるの?
これまでの説明で耐震補強工事には多額の費用がかかることがわかりました。
そこで気になるのは、
助成金などのサポートがあるかどうか
ですよね。
開業時には他にも多くの出費があり、また給付金も2ヶ月後に入金なので出来れば支援が欲しいところです。
地方自治体による助成金の可能性
実は耐震補強工事にかかる費用の一部を負担してくれる助成金が多くの自治体で存在しています。
詳細は各自治体で異なりますが、基本的には上限金額100万円の支援を行っている自治体が多い印象です。
助成金の利用に関しては自治体への申請が必要なので詳細は地域の役所にお問い合わせください。
住宅金融支援機構による融資
自治体による助成金の他に、
耐震補強工事に対する支援制度
があります。
それは「住宅金融支援機構による融資制度」です。
融資限度額は1000万円から1500万円になりますので、耐震補強工事の費用を賄うには十分でしょう。
ただし金利が0.38~0.82%かかるので、こうした利息部分についてはご承知ください。
まとめ
障がい福祉事業の物件に耐震補強工事が必要かどうかは、
- 建築された年代
- 建物の構造
もし不安な方がいらっしゃったら、耐震度を診断する非破壊検査をお勧めしております。
仮に耐震補強工事が必要になった場合は多額の費用がかかるので、融資や助成金の活用を検討いたしましょう。