前回の包括型グループホームが本当に儲かるかどうかの記事(※下記)を興味深く拝見いたしました。
他のグループホームの類型である日中サービス支援型も同じように成功するかどうか知りたいので、教えてもらえるでしょうか?
日中支援型も同じく、障害者グループホームは国の給付があって儲かると考え、開業を検討されている方をお見かけいたします。。
しかし必ずしもグループホームの収益が上がると実証されているわけではないことにご注意ください。
本日はそうした日中サービス支援型の障がい者グループホームの経営実態を、厚生労働省の統計データからご説明いたします。
- グループホームの黒字化戦略がわかる
- グループホームの事業全体の赤字比率がわかる
- グループホームの安定成長の指標がわかる
【日中サービス支援型】グループホーム開業は儲かるの?
<日中サービス支援型のグループホームとは?>
介護サービスを自社で提供し、日中も常に支援が必要な高齢者や障がい者を対象に支援するグループホームの類型です。
障がい者グループホームの経営実態を現在確認するために便利な資料は、厚生労働省がまとめる「障害福祉サービス等経営実態調査」の令和2年度版です。
・【基本】障害福祉サービス等経営実態調査って何?基本と活用を知ろう!
厚生労働省が発表した障がい者グループホームの経営実態をまとめた資料には、日中サービス支援型の統計もあるのですね。
こうした厚生労働省の資料からどのようなことが分かるか教えてもらえませんか?
日中サービス支援型も国の給付により基本的に成立しているので、今後の給付のあり方などを考えるためにも国がデータを集めて調査しています。。
そしてこうしたデータを分析すれば、障がい者グループホームの経営はどのように成り立っているのか読み解くことができるので、実際の資料を見ながらご説明したいと思います。
事業者全体で25%は赤字
まず前回に引き続きご確認いただきたいのは、上の障がい者グループホームの収支差率をまとめたグラフです。
<収益差率とは>
(収入ー支出)÷収入で求める割合で、プラスだと黒字で、他方でマイナスだと赤字とお考えください。
日中サービス支援型のグループホームの収支差率のグラフでは、実は約25%が赤字であることがわかります。。
この割合は包括型のグループホームより赤字のグループホームが多いことを示しますが、収支差率の割合が最多なのは15〜20%と、黒字の事業所数も包括型より多いことがわかります。
同じく確実に黒字と言われるグループホームでさえ4分の1は赤字であることにお気をつけください。
1事業所あたりの収益差=5,849千円
次に上にまとめた表は令和2年度の日中サービス支援型のグループホームの平均的な収益と支出とその差を記しています。
(類型) | 包括型 | 日中サービス支援型 |
(収入) | 48,510 | 51,082 |
(支出) | 44,984 | 45,233 |
(収支差) | 3,525 | 5,849 |
日中サービス支援型も同じように全体の収支差は約580万円の黒字になり、包括型の収支差よりも多額になります。
事業の規模感としても包括型よりも大きく、その分かそれ以上に多くの利益も見込めるとも考えられます。
黒字のモデルは利用者数19名
同じく上の表からは令和2年度のグループホームの平均的な収益と支出と共に、利用者一人当たりの収入と支出の平均がわかります。
<平均的な収益と支出は何人の利用者数のモデル?>
このモデルで収益は51,082千円になっており、黄色マーカーの箇所から一人当たり2,717千円なので、
51,082千円 ÷ 2,717千円/人 ≒ 19人
という計算になります。
上記の計算から日中サービス支援型のグループホームの収支差率で黒字になる平均的なモデルでは、利用者数が19人の想定であることがわかります。。
グループホームの開業で必要な共同生活住居は定員が2名からなので、19人というと結構大きな数であることがわかります。
グループホーム事業の黒字化への戦略
これまで厚生労働省がまとめる「障害福祉サービス等経営実態調査」の令和2年度版を整理して、日中サービス支援型のグループホーム事業の平均的な収支のモデルや利用者数を確認し、おおよその事業全体の概要がわかったと思います。
25%程度も赤字と聞くとびっくりいたしましたが、全体で平均すれば黒字ということで安心いたしました。
では黒字モデルの定員が包括型と同じなら、利益の額が大きい日中サービス支援型の方がいいように思うのですがどうでしょうか?
確かに規模感だけを見ると日中サービス支援型の障害者グループホームの方が有利な気がしますが、そもそも日中サービス支援型は基本報酬単位が包括型と比べて多い点にご留意ください。
ポイントは日中サービス支援型は比較的重度の利用者さんが多いということです。
こうした日中サービス支援型の特徴を踏まえて厚生労働省のデータから読み取れる抑えておきたいポイントをしっかりと解説していきます。
複数のグループホーム
包括支援型と同じく障がい者グループホーム事業が成功するポイントにまず挙げられるのは、複数の共同生活住居を経営することでしょう。
<目指すは4棟?>
黒字化の目安は利用者数19人ということもあり、定員5名程度の小規模の居宅を活用して障がい者グループホームを始めるなら、
19人/棟 ÷ 5人 ≒ 4棟
になります。
障害者グループホームを開業成功の基本は、始めから複数の共同生活住居を経営していくことを視野に入れることでしょう。。
比較的重度の方も多く、一旦グループホームへの入居が決まれば退所することは無いとお考えください。
日中も外出しないことを踏まえると比較的便利が悪い場所でも候補地として選ぶことができます。
医療支援に関する加算を取得する
ここは包括型と異なりますが、日中サービス支援型は比較的重度の方が入居するとのことなので、医療関係の加算を取得することを目指してみてください。
<1人1日あたりいくらが目安?>
上記の「障害福祉サービス等経営実態調査」で利用者1人の利用額が2,717千円なので1日に直すと、
2717千円 ÷ 365 ≒ 7.5千円
になります。
日中サービス支援型は障害区分に応じて基本報酬の単位がかなり変化するので、一概に一人あたりの目安から必要な加算を導くことは難しいです。。
けれども類型に限らず障がい者グループホームには医療関係で適用できる加算が複数あるので、こうした加算を上手く活用してお一人あたりの報酬の単位を上げてみてください。
まとめ
本日は日中サービス支援型の障がい者グループホームについて、データから開業のアドバイスまで教えて頂きありがとうございました。
グループホームの類型ごとの比較もして頂き、開業に向けての参考になりました。
日中サービス支援型は比較的重度の障がい者が多く、そのため医療的なケアの連携が欠かせまねん。。
おすすめなのは医療法人や介護事業をしている会社がグループホームを設立されるときに日中サービス支援型を選ぶことです。
自社の他の事業と相乗効果もあり、支援を必要している方への充実したサービスを提供することができるでしょう。