どうしたら障がい福祉事業所の経営を上手に安定させることができるのか?
そのためには統計データを活用し、多数の事業所と比較して、客観的に数字の上での事業所の現在の状態を把握することが一番です。
本日は、「障害福祉サービス等経営概況調査」について解説いたします。
これまでも厚生労働省が発表する統計のご紹介をしてきました。
報酬改定は障がい福祉事業の経営に大きな影響を及ぼします。
しかし報酬改定による影響とその客観的評価がわかれば、報酬改定後の事業経営の指針を得ることができ、経営安定につながります。
「障害福祉サービス等経営概況調査」から何が分かる?
施設・事業所の経営実態
・加えて定員、実利用者数、延利用者数、開所日数なども調査になっています。
調査項目は、前回お伝えした「障害福祉サービス等経営実態調査」と変わりません。
ポイントは報酬改定が行われた平成29年と、その一年後の平成30年の統計を報告している点です。
この「経営概況調査」は、前回の「経営実態調査」の補完版と考えると分かりやすいです。
統計活用のポイント
・想定する障がい福祉事業サービスの報酬改定の内容を調べて単位の変化などを理解する
・現在の事業所の平成29年度と平成30年度の収益状況と比べ、報酬改定による影響の程度を検討する
・また現在の事業所の報酬改定前後の比率と、全体統計の比率を比べ、差異があればその原因を検討する
従業員の雇用実態
・給与・手当の状況が分かります
これも調査項目は、前回お伝えした「障害福祉サービス等経営実態調査」と変わりません。
報酬改定の前後を比較し、その影響を測るための統計です。
国の政策のために作成された傾向の強い統計です。
統計活用のポイント
・想定する障がい福祉事業サービスの「収益に対する差率」と「収益に対する人件費の割合」を比較し、その事業の人件費の占める割合を認識する
・想定する障がい福祉事業サービスの報酬改定の内容を調べて単位の変化などを理解する
・現在の事業所の平成29年度と平成30年度の事業所の人件費の比率を比べ、報酬改定による影響の程度を検討する
・また現在の事業所の報酬改定前後の比率と、全体統計の比率を比べ、差異があればその原因を検討する
更なる活用に向けて
平成29年度の時点で開業している事業所に便利
「障害福祉サービス等経営概況調査」は、あくまで報酬改定前後の推移が要点で、各障がい福祉サービスごとの経営状態の変化を一般的に把握するものではありません。
それゆえに新規開業というよりは、報酬改定が行われる前の平成29年度から開業している事業所にとって、そのような報酬改定の影響をどのように受けたのか調べることができます。
その結果、自分たちの事業所の報酬改定による影響を調べ、全体統計と比較することで、この報酬改定の影響をどの程度、他の事業所と比べて有利に、もしくは不利に働いているのかが分かります。
それは競合他社の動向を探る上で重要な指標になるでしょう。
人件費の変化に注目する
障がい福祉の事業所が受ける給付の中で、人件費への支出が大半を占めます。
多くの事業所は賃金規定や就業規則等で賃金が規定されていますが、全体統計では殆どの障がい福祉サービスで「収益に対する人件費の比率」が下がっています。
ここで自分たちの事業所のその「収益に対する人件費の比率」を持ち出して、特に人件費に関してどのような規定や規則によって変化があったのかを明確にしてください。
国による一方的な改定による変化とはいえ、障がい福祉サービスは手がけるスタッフの力で成り立っているので、どのような改定による変化があるとはいえ、「収益に対する人件費の比率」を下げない工夫が必要です。