障がい福祉事業で農地を使う手続きは何でしょうか?
現在、農業の世界は、高齢化や過疎化といった問題を抱えています。
その中で大きな課題が、働き手の確保や地域農業の維持です。
そこでその解決策として政府が積極的に支援しているのが、
障害者や生活困窮者等が農業分野で就労すること
です。
そうすると、「人手が足りない」農業界と「就労を促進したい」障がい福祉業界のお互いが良好な関係になります。
しかし障がい福祉事業所が農地を借りたり購入したりするにはハードルがあるのです。
この記事を読むと、障がい福祉事業所が農地を借りたり購入したりするには、どのような手続きが必要か分かり、農地の探し方まで知ることができます
弊社に寄せられる相談の中で「農業で障がい福祉事業をやってみたい」と言った声もたくさんありますが、皆さんその手続きの複雑さに悩んでおります。
そこでまず、障がい福祉事業で農地を活用する時に必要な手続きの基本をわかりやすくお伝えいたします。
障がい福祉事業で農地を使う手続きは?
農地は生きるための食べ物を育てる貴重な資源であり、身勝手に使えないよう様々な規制が張り巡らされています。
それは障がい福祉事業で活用する時も同じで、一定のハードルを越えないと使うことができません。
そこで気になるのは、
障がい福祉事業で農地を使うのにどのような手続きをすればいいの?
と言った点ではないでしょうか。
以下では2点の観点からお伝えいたします。
法人が適正な体制を備えている
まず農地を借りたり購入したりする障害福祉事業所が、農業を行うのに適正な体制を備えていることが要件です。
まず農地を「借りる」ために具体的には次の5つの点から判断されます。
1 農地の全てを効率的に利用すること
2 一定の面積を経営すること
3 農地を適正に利用していない場合には賃貸借の解除をする旨の契約が締結されていること
4 役員等が1人以上農業に常時従事すること
5 周辺の農地利用に支障がないこと
基本的にはこれら5つの要件を満たすことが必要とされます。
しかし注意していただきたいのは例外があることです。
例外
社会福祉法人など「営利を目的としない社会福祉事業を行う法人」が社会福祉に農地を使う場合には、上記5の要件だけを満たせば、農地を「借り入れ」又は「購入する」ことができる
つまり障がい福祉事業を農地で行う場合、その主体である事業所が「営利を目的としない法人」であれば上記5の要件だけクリアするだけで農地を適正に利用する体制があると認められるのです。
反対に言えば、株式会社などで就労継続支援B型をしている場合はこの例外に該当しない点をご注意ください。
また農地を「購入する」場合に限定して言えば、「農地所有適格法人」と認定されれば可能です。
農業委員会の許可を受ける
次に障がい福祉事業で農地を利用するハードルは、農業委員会の許可を受けなければいけないことです。
農地を所有者以外の方が購入もしくは賃貸で利用するには、<u>農地法第3条の許可を農業委員会から受けなければなりません</u>。
その農地法3条の主な許可基準は次の通りになります。
・ 今回の申請農地を含め、所有している農地または借りている農地のすべてを効率的に耕作すること
・ 法人の場合は、農業生産法人の要件を満たすこと
・ 申請者又は世帯員等が農作業に常時従事すること
・ 今回の申請農地を含め、耕作する農地の合計面積が下限面積(50 アール)以上であること。
・ 今回の申請農地の周辺の農地利用に影響を与えないこと。
・ 不耕作地や違反転用がないこと。
注意していただきたいのが、もし無許可で農地を利用した場合は「無効」となる点です。
障がい福祉事業で使う農地の見つけ方は?
これまでのお話で、障がい福祉事業所が農地を利用する要件について理解できたと思います。
そこで各種の条件を満たし農地を利用しようと思っても、次の疑問
福祉事業に適した農地ってどうやって見つけるの?
という壁にぶつかります。
そこで次に障がい福祉事業のための農地を見つける方法をお伝えいたします。
全国農地ナビを使う
インターネット上の「農地ナビ」を使用して障がい福祉のための農地を探すことが一般的です。
「全国農地ナビ」は無料で使用できます。
利用者は「地域」や「各種条件」を選んで検索にかけると、その設定に合致した農地が表示される仕組みです。
その探す時に大事なのが、
どこで、どんな農業を、どんな規模で行うかなどをはっきりさせ、営農計画をきちんと立てること
です。
農業は「作物」や「家畜の種類」によって内容は多岐に渡り、そのための技術・必要な農地面積・資金量も異なります。
従って農地を探す段階で、しっかりと障がい福祉事業で行う事業計画を持つことが重要です。
そして気になる農地があれば、その情報欄に表示されている管理団体に連絡を取りましょう。
障がい福祉事業で使う農地の始め方とは?
これまでの説明で障がい福祉事業で農業を始める時のハードルや農地の探し方が理解できたと思います。
それでは、すぐに農業を開始できるかというと、少し難しいでしょう。
というのも、もし農業の経験があまりないなら、
福祉団体で経験がないので、農業の始め方はどうすればいいの?
という課題に突き当たります。
そこで未経験者が農業を始めるオススメの支援があるので、それをご紹介いたします。
普及指導センターの活用
農業の仕方を教えてもらうために、都道府県に設置されている農業の普及指導センターを活用するのが便利です。
普及指導センターは都道府県の出先機関にあたり、そこに農業の専門技術者が配属されています。
そのような専門技術者の支援を受けて、次のような事項
・環境にやさしい栽培方法
・省力栽培
・経営簿記の記帳
・地域特産品の開発
・地域の生活環境の整備
など学ことができます。
ただ注意点として、農業を新しく始めたい障がい福祉事業者も前もって、
・どの程度農作業を行うのか?(年に数回だけ、週に数日など)
・どのような方を対象とした指導なのか?(障害の種類や人数など)
・どこで農作業を実施するのか?(体験農園や福祉施設)
・日常の管理はどこまで行うことが可能か?
などの観点を整理していくと、スムーズに指導を受けることができます。
まとめ
農地を使うには様々なハードルがありますが、営利を目的としない法人だと比較的スムーズに開業できます。
そして農地の見つけ方や、農作業の具体的な指導などもサポートする体制が整っているので、未経験な障がい福祉事業所さまでも安心して始めることができます。
なので「農業はわからない、、、」と思う方でも、ぜひ挑戦していただきたいです。